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主に電車の中で映画を見るBBAに差し掛かった女のネタバレ感想ブログ

ジェニーの記憶(2018年)

40代の女性、ジェニーが実家の母ちゃんが見つけた子供の頃に書いた「物語」がきっかけで自分のはじめての恋愛を思い出していく話。

 

母ちゃんは「なんやこれ!」と思って電話してくる。13歳のジェニーが学校の課題で出した文章には、彼女が夏休みに通っていた乗馬教室の先生とその友人男性との関係がフィクションとして書かれていた。父親に連れられて行った乗馬教室の先生は夫と息子がいるが美しい女性。そしてその先生の紹介で陸上指導をしている男性と知り合う。

最初のジェニーの回想は15歳くらいに見えるんだけど、実家に帰って母ちゃんがアルバムで13歳の写真を見せてくれたら、次の回想からはジェニーがそれまでよりいっそう幼くなるんだけどこの演出がうまいな〜と思った。

ジェニーは先生の友人男性を「元彼」と言って今彼に初めて付き合った男性だとさらっと話してたんだけど、自分の記憶より幼い当時の自分を写真で客観的に見たことで徐々に「元彼」「恋愛」という認識に違和感を覚えていく。当時の知り合いや先生自身と会って話をすることで、だんだん自分が性被害なのでは、いやそうではない、と葛藤していく。

当時のジェニーはそれを美しい物語だと評しているんだけど、40代のジェニー、そして見ているアラフォーの私には歪で気味の悪い物語としか思えなくなってくる。

最終的にジェニーはその男性と対面することにする。陸上指導でそれなりに名声を得て(でも陰には悪評もある…性被害の)妻もいる年老いた男性の、なんかの表彰かなんかのパーティーに入り込むジェニー。対面するも男性はにこにこしてジェニーのことなど忘れているかのような対応。だんだんと声を荒げ自分との関係をパーティーの出席者の前でブチまけるジェニー。今まで子供ジェニーのモノローグは「特別な二人との美しい関係」「愛していた」と綴られていた関係が、大人ジェニーの口からはっきりと「嫌だった」「セックスのたびに吐き気がした」と真反対の言葉で表現される。男性からも出席者たちからもシラーッと奇妙な目で見られ、会場から逃げるように出て行くジェニー。トイレで一人、吐き気をもよおしたり涙したり無理やり笑ったりする。子供のジェニーが、ハンカチを差し出す。大人と子供の二人のジェニーが、途方にくれたようにトイレの壁にもたれて座り込んでいた。終わり。

 

自らによって「よくある若い頃の恋愛の思い出」が「ずるい大人が無知な子どもをだまくらかして性被害に遭っていた記憶」に変わっていくのが恐ろしい。ジェニー自身がそれをなかなか認められない。兄弟が多くてジェニーに構ってられなかったお母さんの後悔が悲しい。

某女優?の離婚報道で「娘を持ったら未成年の自分に手を出した夫が気持ち悪くなった」的なことを言っていたのを思い出した。でしょうね。いや、当時テレビの前で私も「えっ…」って思ったよ、そんな歳違わないけど…。